知らない夜の住処

 

 

酒を飲む夜は肴代わりに煙草をよく吸う。逆に酒を飲まない夜は眠れないので煙草をよく吸う。毎日ひと箱、よく分からないままにたばこ税を払っている。

 

ベランダに身体を投げ出して、吸い終わって部屋に戻って。そのあとすぐの息は大体白い。それが肺に残った煙なのか寒さなのかは知らない。エアコンのリモコンをなくしてからというもの、わたしの部屋は外と同レベルで冷えている。そういえばエアコンのリモコンってちょうどキモめの韻だよね。おんなじコンなのに違うワードの略称なの未だに納得いってないんだよな。

わたしが白い息を吐く度、部屋の壁紙は黄色くなってく。血痰が出るようになったのと部屋中から煙草の匂いがするようになったのと、どっちが先だったっけ。身体に悪くて住宅にも悪いのなんでよ。しかも賃貸なのにさ。あとわたし本当は煙草吸っちゃダメな薬飲んでる。それ飲んで喫煙すると血栓症になるんだって。へ〜。その病気って死ぬとき楽めなやつ?そういうとこしか興味ないので、わたしはまだ煙草をやめない。

 

そういえばもうひとつダメな薬飲んでる。喫煙じゃなくて飲酒だけど。こないだ薬の服用量を間違えた上に深酒してしまったのでそれはもうやばいことになった。歩けなくなってコンビニの壁に激突していたらしい。らしい、というのはわたし自身記憶がないから。その日一緒に飲んでいた彼氏が後に「すごい勢いでぶつかってたけど痛くない?」と訊いてくれたことで知った。ちなみに石頭だからか全然痛くなかった。それより尾てい骨が異常に痛い。今も痛い。

わたしの名誉の為に言い訳させてもらうのならば、別に毎回こんな酔い方をしているわけではない。元々シンプルに飲みの席が楽しくて、酔っ払うのが気持ちよくて、それだけだった。どんなに酷い夜でも酩酊でしか埋められない隙間なんてなかったはずなのだ。

それが今ではアルコール依存症の彼氏に酒やめろと言われるまでになっている。いや本当に、こんな酔い方は普段しないんだって。マジマジ。友人と飲みいって怒られたことないし。なんなら介抱する側だし。そう思ったけどたぶん、というか絶対、信憑性に欠け過ぎてるので口を噤んだ。でも薬より即効性があって好きなので、わたしはお酒をやめない。

 

煙草もお酒も本当はやめていいんだよね。わたしには趣味が一切ないから。やめたらなんもないなと思ってる。でもそれってやめたからなんもないんじゃなくて、元からなんもないのが問題なんだよな。趣味どころか特技も面白みもないじゃんね。ニコチンとアルコールにそんなベクトルのバフはないよ。元々化け物みたいな自分を、更に化け物じみた存在にしていくだけ。ね。ごめん。何に謝ってるかも最早わかんないけどすべてが遠くなってくのが寂しい。けど人間じゃないから君に伝わるコミニュケーションがとれなくて悪循環してく。自分にとってこの世でいちばん最悪なことが起きてる、怖い、助けて欲しい。全部結局ひとりよがりで嫌だな。

 

ところで化け物可の紙巻吸える居酒屋知りませんか?