葬式の予行演習

 

執着を手放せないままでいる。縋ることが意味を成さないと知りながら、大事に抱えていかないと破綻してしまいそうだった。実のところもうとっくに破綻しているのかしら。良くなったと思ったメンタルは別にそうでもなかったらしく、ぐちゃぐちゃになった情緒のなかで自分は健常者だとして生きている。わたしはずっと普通だ。頭がおかしいと罵られたことすらも半ばトラウマとして、やっぱりにこにこと過ごしている。

わたしは大切にされてなかったのかもしれないとやっと認められた。わたしは本当に普通なんだ。楽しかったことも悲しかったこともたくさん堆積して、都合よく扱われることばかりで、なんだか最近はそれが幸せな気がする。何にせよ存在しない事象に騒ぎ立てているだけなら正当性を許される為に端からわたしにとって不都合であって欲しい。自傷だとか全部どうでもいい。呼吸とヒステリックが相互ならば、最初からなんでもいい。

願わくば自分が一過性のかわゆい傷跡になりたい。鉤爪が輝くその瞬間を見ていて欲しい。最後だけはなんでもよくなくて、痛くて鮮烈で、マキロンを塗っちゃえば滲みるけど有象無象の陰で忘れ去られるような、気付けば治っていて原因も思い出せないような、そんな在り方がいい。君は、君らは。受動的三分間じゃ足りないし、引き摺ってしまうと甘言を弄するけど。弄される側のわたしにだってまあ問題は大いにあるが。そうじゃないんだよって身を以て教えてあげたいな。

 

わたしは普通だった。今までも、これからも。

 

ベランダの縁に手を掛けて、身体を持ち上げて、そこから全てを投げれなかったのは怠惰だったんだろうか。肉体的か、精神的か。どうにもならないのは常に自分のことだけだ。そんな幻想で睫毛を濡らして、便器に顔を突っ込んで、ねえ何が悪かったんだろうね。全部自分のせいだとは解っているけど。断片的にでも救われたいと思うことすら悪いことだったのかな。

今までの話は全部嘘だからさ、普通の女の子でいられて良かった。いつか死んだ日も忘れた顔して弔ってね。全ての記憶を。